ウクライナ紛争と歴史の記憶

代表の独り言

今日の昼、テレビ番組に、リトアニアの駐日大使が出演していました。

リトアニアは旧ソ連の構成国です。第二次世界大戦後にそれに吸収され、ソ連崩壊後に独立を達成した国です。

その国の大使が、今回の停戦交渉について意見を述べていました。その中で、彼が繰り返したのが、「歴史」という言葉です。

ヨーロッパの報道を見ると、今回の紛争は、旧ソ連の拡大によるヨーロッパへの圧迫という側面、そして、プーチン=ヒトラーという捉え方がなされているようです。

ヨーロッパ諸国の多くリーダーは、このウクライナ戦争をヒトラーによる侵略という歴史を絶対に繰り返してはならないと点で一致しているようです。

数年前に亡くなった上智大学名誉教授の渡部昇一氏が、留学先のイギリスで担当教授から「君、歴史を学びなさい。」と強く言われたと氏の著書の中で書いていました。

世界の中では、歴史を学ぶとは、自分のアイデンティに通じ、ひいては民族のルーツ、誇り、屈辱などにつながるのです。だから、相手を知るには、相手の国、民族の歴史を知らなくてはならない。というのです。それは、自分の国や民族、地域の歴史を知るということに通じます。

それは一方で、危険を伴います。なぜなら、歴史教育はときの政権の意図する方向に誘導され、そこで生まれたアイデンティは、排外的になってしまい、その熱量は作り出した権力者さえもコントロールできないほど、暴走することがありえるからです。

リトアニアを含む三国は、ロシアに対して非常に敵対的で、国内に住むロシア住民に対する締付けを行っています。それは、第二次大戦前後の悲惨な歴史が国民の間で共有され、危機感が醸成されているからです。

リトアニアは、東洋のシンドラーと呼ばれた杉原千畝が領事館領事代理として赴任した国。彼は日本国政府の方針に反して、ユダヤ系住民を中心とする人々にビザを発行し、多くの人がロシア経由で日本経由で避難民を救ったことは有名です。それもまた歴史です。一人の日本人の行いは、時を超え、そして多くの人に受け継がれ、さまざまな分野に影響を与えます。